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24歳のパナパナです☆写真で新しい世界を表現する写真作家目指し毎日色んなものを吸収中


by panayuki
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 ずっとひとりで頑張ってきた君へ



 こんにちは。パナパナです。昨日は朝からバスで名古屋へ行ってきました。
 いつもは名古屋の街が大好きで、名古屋観光が目的でしたが今回は違いました。

 会いたい人がいました。名古屋でずっとひとりで頑張ってきた君に会いたかった。
 家族にもわかってもらえず、友達にも話を聞いてもらえない。そんな孤独の中に
 いる君に「大丈夫だよ。」って言いたかった。その言葉を君に伝えるために。

 今年に入ってネットで知り合った男の子がいた。愛知県に住む20歳の大学生。
 そのコは僕と同じ「吃音」を持っているコ。小さい頃からずっと吃音だったコ。

  ずっとひとりで頑張ってきた君へ_e0144101_1312372.jpg 家族の中に吃音の人は一人もいなくて。
 家族の中でそのコだけが吃音で。

 吃音という言葉も全く知らない家族は
 吃音のつらさも何もかも全然知らなくて。
 吃音を真剣に取り合ってはくれなくて。

 仲のいい友達に勇気を出して言っても
 「気にするなよ。喋れてるじゃん!」
 と相手になかなか上手く伝わらない。

 普段からあまり積極的に喋れないから
 友達を作るのも大変。親友を作るなんて
 もっともっともっと大変。友達に誤解
 されて離れて行った友達は数えきれない
 ほど見てきた。全然喋らないから一緒に
 いても面白くない。そんな風に思われて
 当然なのかもしれない。

 だんだんと家族や友達に「吃音」のことを話さなくなった。わかってもらいたくて
 話せば話すほど傷付いている自分がそこにいた。僕をわかってくれる人なんていない。
 そして吃音を隠すようになった。バレたくない。バレないように生きて行こう。

 そして、たまたま僕があるサイトに吃音で悩んでいることを書いた。そのコもそれを
 偶然見てくれてメールをくれた。それから彼とメールのやりとりをするようになった。
 そして思い切って「会いませんか?」という僕のメールにOKしてくれた。

  ずっとひとりで頑張ってきた君へ_e0144101_132923100.jpg 名古屋駅で彼と待ち合わせをしました。
 僕は自分から誘っておいて間際になって
 自分以外の吃音者に会うのが怖くなった
 
 何だか無性に逃げ出したくなりました。
 こんな気持ちは初めてで何だか怖かった。

 お互い服装の特徴をメールし合っていて
 待ち合わせ場所で待っていた。ふと前を
 見ると男の子が僕に微笑んでくれた。

 僕も彼の顔を見て微笑んだ。こんなに
 近くにいるのに言葉を交わさずに
 微笑み合う2人。そこに言葉なんて
 必要ありませんでした。

 一緒に歩きながら軽く自己紹介をして
 ご飯を食べに行きました。店に入って
 注文をするときに僕は考えていました。
 
 注文するときというか正確には1週間ぐらい前から。お店で注文するとき、吃音者は
 注文する言葉が言いにくかったりしてつらいので、注文は僕がしようって思っていた。
 僕も注文するときしんどいけど、彼にしんどい思いを絶対にさせたくなった。

 そして注文するときに僕が喋る前に彼が注文してくれた。彼も同じことを考えていた。
 僕にしんどい思いをさせたくなかった。自分がしんどい思いをする方がマシだと。
 「ありがとう。」僕の言葉に彼は微笑んで「いえいえ。」と言ってくれた。

  ずっとひとりで頑張ってきた君へ_e0144101_13451370.jpg

 吃音者はとても繊細で。吃音は繊細な人がなるものだとも言われていたりします。
 僕も彼もとても繊細で小さなことにも気が付いてしまう。神経質で、真面目な性格。
 僕と彼は店に入って同じことを考えていました。そのお店の雰囲気。空気感です。

 「このお店の空気感。ちょっと喋りずらいですね。」「僕も同じこと考えてました。」
 吃音者はその場の空気も敏感に察知します。なぜなら、空気で喋れる。喋れない。と
 分かれてしまうんです。きっと普通の人なら感じない空気をすごく敏感に感じます。

 なのでそのお店でご飯を食べて、あとは他の場所へ移動しました。こういうことが
 解り合えるってやっぱり吃音者同士ならではなんだなぁってものすごく感じました。

  ずっとひとりで頑張ってきた君へ_e0144101_1350077.jpg それからスタバに移動しました。
 そこからゆっくり色んな話をしました。

 人ってこんなにも分かち合えるものなの?
 正直そんなことを思いました。吃音のこと
 で人と分かち合えた経験というのは今まで
 全くありませんでした。

 ありがたいことに僕の周りには吃音を
 理解してくれる家族がいて友達がいて
 とても恵まれた環境なんだって本当に
 心の底から思っています。とても大切
 な存在です。いつも感謝してます。

 でも理解してくれる友達はいますが
 「分かち合う」人は今までいなくて。
 だから初めての経験でした。
 
 僕が今までの人生で吃音で経験してきたことは彼も全部、経験してきていて。
 彼が今までの人生で吃音で経験してきたことは僕も全部、経験してきたことなんです。

 もうホント何か喋れば、相手が心の底から共感してくれて。という感じでもうずっと
 喋っていました。お互い喋ることが苦手なのに。でも彼はとても前向きで明るいコで
 人見知りもしないし、笑顔で。吃音には負けねえ!ってずっと言ってて。

 僕もそういう彼を見ていて学ぶことがホントにたくさんありました。でもやっぱり
 ずっと吃音のことを喋っていたので意識し過ぎてしまったので、最後の方はもう
 僕の苗字の最初の言葉が出てこなくなっちゃって。一生懸命、吃りながらも言おう
 とする姿に何だかちょっと感動しました。心の中で「頑張れ!」って思いました。

  ずっとひとりで頑張ってきた君へ_e0144101_1442155.jpg

 なので違う話もしました。名古屋と大阪の違いみたいなこととか話をして。
 僕が「名古屋の人って語尾にみやぁーって言う??」って聞いてみたら
 「えっ??言わないですよ。」って言われました。完全なガセネタらしいです。

 あとは女の子の話なんかもして。ホントその日に初めて会ったとは思えないほど
 すんごく仲良くなりました。今度はお酒飲みながら喋りたいって言ってくれて。
 4月に飲みに行く約束をしました。これでまた名古屋に行けるね(笑)やった!!

  ずっとひとりで頑張ってきた君へ_e0144101_14101280.jpg 2人で喋ってて沈黙になる時があって。
 でもそれは次の言葉を言えるように
 自分の中でリズムを作ったりとか
 タイミングを整えたりしてるんです。

 そういうのもお互いに口にしなくても
 目と目で分かち合いました。すごく
 いい関係だなぁって思いました。

 自分に無理することもなくて、何も
 言わなくても分かち合えることがある。
 そういう関係にお互い「いいね。」
 って言い合っていました。

 「今までひとりで頑張ってきたね。」
 って言うと少し照れた顔で「はい。」
 って。お互いこれからはもうひとり
 じゃないね。って慰め合いました。

 ホントにすごく良い子だ。とても素直で正直で繊細で人の気持ちになって物事を考えて
 どうしても言えない言葉があるとペンとメモと取り出して言いたいことを書くんです。
 字を書いているときの横顔を見ると一生懸命、伝えたいって気持ちが伝わってきた。

 何でこういうコが今の世の中、生きにくいんだろう。何でこういうコが自分に無理せず
 生きられないんだろう。そんなことを帰りのバスの中でボンヤリ思っていました。
 こういうコに「生きてて楽しい。幸せ。」って言ってもらいたい。
 「吃音でも幸せ」って言ってほしい。自分には何ができるだろう。このコと同じように
 吃音で苦しんでいるコはまだまだたくさんいる。その人たちのために何かしたい。

 そんな思いがバスの中でどんどん膨れ上がってきていました。待っててもダメだ。
 自分が何かしなきゃ!誰かがじゃなくて僕だ!僕が何かしなきゃ!僕だよ!僕が!!!
 このコと出会って、自分の中の色んな気持ちがひとつになったような気がする。

 最後、彼と分かれるときに握手をしました。手をギュっと握って「がんばろうね。」
 メールをする約束をして、彼と別れました。彼は最後までずっと笑っていた。
 
 ずっとひとりで頑張ってきた君へ。

 君はもうひとりじゃないよ。

 
 
 
by panayuki | 2009-03-20 14:27